【量子力学メモ】シュレディンガー方程式 1

前回は粒子の二重性における波の式、波動関数をもとめました。

1. 空間に依存するシュレディンガー方程式

さて、波動関数はこの形でした。

{\displaystyle 
\Psi(x, t) = Ae^{i(kx - i \omega t)}
}

この関数は空間と時間の変数を持っているので、どちらか一方が変化したときの変化を調べたいと思います。例えば空間に依存することを考えると、 x偏微分すればいいので、

{\displaystyle 
\frac{\partial }{\partial x} \Psi(x, t) = \frac{\partial }{\partial x} Ae^{i(kx - i \omega t)}
}

となります。振幅 Aは定数なのでしばらく放っておきます。これを計算すると、

{\displaystyle 
\frac{\partial }{\partial x} \Psi(x, t) = ik Ae^{i(kx - i \omega t)}
}

右辺の  ik にかかっているのは  Ae^{i(kx - i \omega t)} で、波動関数  \Psi(x, t) そのものです。よって、

{\displaystyle 
\frac{\partial }{\partial x} \Psi(x, t) = ik \Psi(x, t)
}

となります。つまり、複素数における波数  ik を作用させたものが波動関数の空間変化になります。

さて、この式をよく見ると波数がかかっています。光子は粒子でもあり、波でもあるのでエネルギー保存則と運動量保存則を考慮する必要があります。ここで思い出すべき式は

{\displaystyle 
光子のエネルギー : E = \hbar \omega  光子の運動量 : p = \hbar k
}

です。で、 ik \hbar をかければ運動量を代入できます。よって、

{\displaystyle 
\hbar \frac{\partial }{\partial x} \Psi(x, t) = i \hbar k \Psi(x, t)
}

{\displaystyle 
\hbar \frac{\partial }{\partial x} \Psi(x, t) = ip \Psi(x, t)
}

となります。両辺を  i で割って右辺から消去すると

{\displaystyle 
\frac{\hbar}{i} \frac{\partial }{\partial x} \Psi(x, t) = p \Psi(x, t)
}

となり、運動量  p波動関数  \Psi に作用する式になりました。左辺を見てみると、 \frac{\hbar}{i} \frac{\partial }{\partial x} \Psi に作用しているので、 \frac{\hbar}{i} \frac{\partial }{\partial x} は運動量演算子 (※) となります。

さて、この運動量ですがニュートン力学古典力学)では質量と速度の積  p = mv です。また、光電効果による運動エネルギーを考慮すると  T = \frac{1}{2} mv^{2} です。さて、運動量の式を少し変形すると  v = \frac{p}{m} となり、運動エネルギーの  v に代入できます。

{\displaystyle 
T = \frac{1}{2} m \left( \frac{p}{m} \right)^{2}
}

2乗を展開して  m 同士で約分できるので、結果として

{\displaystyle 
T = \frac{p^2}{2m}
}

という式が得られます。量子力学における運動エネルギーの式が出てきました。なので全エネルギーを求めたいときは、この式にポテンシャルエネルギー V (量子力学では  U ではなく  V をつかう) を含めれば、

{\displaystyle 
E = \frac{p^{2}}{2m} + V
}

という式になります。この式の形を覚えておくと、あとであることに気づきます。

さて、運動エネルギーの式も求まったので、あとは先ほど求めた波動関数の空間微分の式に代入するだけですが、このままでは代入できないので変形します。まずは  p を光子の運動量として考えて、 p = \hbar k とします。すると、運動エネルギーは

{\displaystyle 
T = \frac{\hbar^{2} k^{2}}{2m}
}

となります。次に、先の式に合わせるために  k^{2} の式に変形します。

{\displaystyle 
k^{2} = \frac{2mT}{\hbar^{2}}
}

次に、波動関数偏微分して求めた  p \hbar k に戻しておきます。

{\displaystyle 
\frac{\hbar}{i} \frac{\partial }{\partial x} \Psi(x, t) = \hbar k \Psi(x, t)
}

すると、  k に代入できそうですが、累乗になっていないと代入できません。これを累乗にするには  x でもう一度偏微分します。すると、波動関数から再び ik が出てくるので、

{\displaystyle 
\frac{\hbar}{i} \frac{\partial^{2} }{\partial x^{2}} \Psi(x, t) = \frac{\partial}{\partial x} \hbar k \Psi(x, t)
}

{\displaystyle 
\frac{\hbar}{i} \frac{\partial^{2} }{\partial x^{2}} \Psi(x, t) = i \hbar k^{2} \Psi(x, t)
}

となります。これで代入ができるようになったので、 k^{2} = \frac{2mT}{\hbar^{2}} を代入します。

{\displaystyle 
\frac{\hbar}{i} \frac{\partial^{2} }{\partial x^{2}} \Psi(x, t) = i \hbar \frac{2mT}{\hbar^{2}} \Psi(x, t)
}

さて、先ほどは運動量と波動関数の積 p\Psi(x, t) によって、運動量演算子を求めることができました。今度は  T があるので、運動エネルギーと波動関数の積  T\Psi(x, t) から運動エネルギーが求まりそうですね。これを求めるために式変形していきます。

右辺を見てみると  \hbar 同士で約分できるので、

{\displaystyle 
\frac{\hbar}{i} \frac{\partial^{2} }{\partial x^{2}} \Psi(x, t) = i \frac{2mT}{\hbar} \Psi(x, t)
}

さらに、 i が邪魔なので両辺に  i をかけて

{\displaystyle 
\hbar \frac{\partial^{2} }{\partial x^{2}} \Psi(x, t) = - \frac{2mT}{\hbar} \Psi(x, t)
}

 \hbar も邪魔なので両辺に  \hbar をかけて

{\displaystyle 
\hbar^{2} \frac{\partial^{2} }{\partial x^{2}} \Psi(x, t) = - 2mT \Psi(x, t)
}

あとは  -2m で割れば  T \Psi(x, t) の積になるので、

{\displaystyle 
- \frac{\hbar^{2}}{2m} \frac{\partial^{2} }{\partial x^{2}} \Psi(x, t) = T \Psi(x, t)
}

となり、めでたく運動エネルギーと波動関数の積が求まりました。よって、運動エネルギーは  - \frac{\hbar^{2}}{2m} \frac{\partial^{2} }{\partial x^{2}} であることが分かります。

さて、運動エネルギーが求まったので、エネルギー  E が求まりそうです。エネルギーは運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの和で表現されます。が、今回は波動関数に作用しているので、 E\Psi(x, t) = T\Psi(x, t) + V\Psi(x, t) となるはずです。よって、運動エネルギーの式を代入すれば

{\displaystyle 
E\Psi(x, t) = - \frac{\hbar^{2}}{2m} \frac{\partial^{2} }{\partial x^{2}} \Psi(x, t) + V\Psi(x, t)
}

右辺は波動関数でくくれるので、

{\displaystyle 
E\Psi(x, t) = \left( - \frac{\hbar^{2}}{2m} \frac{\partial^{2} }{\partial x^{2}} + V \right) \Psi(x, t)
}

となります。

これで空間に依存する(時間に依存しない)シュレディンガー方程式を導出できました。もう少し丁寧に書くと、時間依存しないので t = 0とし、ポテンシャルエネルギーが空間依存するとすれば

{\displaystyle 
E\Psi(x) = \left( - \frac{\hbar^{2}}{2m} \frac{{\rm d}^{2} }{{\rm d} x^{2}} + V(x) \right) \Psi(x)
}

となります。

さて、次は時間依存を考えたいところですが長くなったので次回にまとめます。

補足

※ 一般的な運動量演算子

 i で割らずに両辺にかけて、

{\displaystyle 
\hbar \frac{\partial }{\partial x} \Psi(x, t) = ip \Psi(x, t)
}

{\displaystyle 
i \hbar \frac{\partial }{\partial x} \Psi(x, t) = - p \Psi(x, t)
}

右辺を正にするためにマイナス符号を両辺にかけて

{\displaystyle 
- i \hbar \frac{\partial }{\partial x} \Psi(x, t) = p \Psi(x, t)
}

となり、 - i \hbar \frac{\partial }{\partial x} を運動量演算子とするのが一般的です。確かに虚数が分母にあるよりは扱いやすいです。

参考文献

高校数学で分かるシュレディンガー方程式